地上型レーザースキャナーとは、機器を回転させながらレーザーを照射し、対象物までの距離・方向から点群データを取得する3次元測量機です。レーザーを連続的に対象物へ照射し、返ってきたレーザーをとらえることで対象物の構造・大きさなどの情報を取得します。
地上型レーザースキャナーの特徴は、面計測ができる点です。1点ずつ計測する従来のトータルステーション(TS/測量機)とは異なり、短時間で点群データの取得ができます。ドローンを使った空中レーザー測量でも面計測は可能ですが、大量の写真データから点群化する作業には手間がかかります。地上型レーザー測量では、点群化の作業を行うことなく点群データを取得できます。
国土交通省が2016年からスタートした「i-Construction」では、建設現場でICTを活用し生産性向上を目指す取り組みを推奨しています。2024年4月には、さらなるDX推進を目指して「i-Construction2.0」が掲げられ、建設現場のオートメーション化はますます重要性を増しています。
特に、3次元で建物のデジタルモデルを作成できる「BIM/CIM」の活用促進が推奨される中では、点群データの計測は欠かせません。点群データの利用用途や活用の幅は今後も広がっていくと考えられます。 さらに構造物を作った後、図面通りかどうかを確認する工程(出来形管理)においても地上型レーザースキャナーの使用が推奨され、国土交通省の出来形管理の監督・検査要領(土木編)でもその詳細が定められています。このことから、地上型レーザースキャナーによる測量は今後あらゆる現場で普及していくでしょう。
参考:地上型レーザースキャナーを用いた出来形管理の監督・検査要領 (土工編)(案)(国土交通省)
トータルステーションは角度と距離を同時に計測できる機器で、測量機と呼ばれます。地上型レーザースキャナーでは大量の点データを面として短時間で取得し、点群データが計測できますが、トータルステーションは測量対象の1つの点を計測するのに特化しています。 トータルステーションのメリットは、1台の機械で角度と距離を同時に計測できるため、コスト削減・作業効率の向上が図れることです。自動追尾型モデルを使用すれば、一人で作業を完了することも可能です。一方でデメリットは、複数の点を測量する際に繰り返し測量作業が必要で、時間がかかってしまうことが挙げられます。
地上型レーザースキャナーを使用するメリットとデメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。以下で主なものをまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
地上型レーザースキャナーは広範囲にレーザーを照射し、対象物の位置情報を面で測量します。これにより測量作業の回数が少なく済み、作業時間の短縮に役立ちます。また、急な斜面など人が立ち入るのが難しい現場なども、離れた場所から測量できて作業員の安全確保につながります。
面で空間の位置情報をとらえる地上型レーザースキャナーは、建築・土木現場の測量だけでなく、環境計測・遺跡・文化財の調査など幅広い分野で活用されています。道路工事においては、工事による影響監視や法面の挙動を確認するなど、安全に作業を遂行する目的で利用することも可能です。
近年、建設業界では人手不足や長時間労働が問題視されています。地上型レーザースキャナーは測量作業を短時間で終えられること、そして作業のICT化や働き方改革につながることから、活用が徐々に進んでいます。少ない人員でも、デジタルの力を使って作業を効率化できる可能性が注目されているのです。
地上型レーザースキャナーは比較的高価な機器です。精密機械のため、現場への持ち運びの際には振動や衝撃による故障に留意する必要があります。また、雨や霧などで測量が正しくできない場合があることも把握しておきましょう。
地上型レーザースキャナーで点群データを取得した後は、ノイズ処理・データ処理などの社内作業が必要となります。取得した点群データをその場ですぐに確認できる機能がない機種も少なくありません。現場ですぐに確認できるタイプでも、精度が保証されていない場合があるので注意しましょう。
地上型レーザースキャナーは様々な現場で活用が可能ですが、測量、出来形管理、構造物の確認、災害復旧・防災という4つの場面では、特に導入のメリットを感じられる部分が多いでしょう。以下でそれぞれについて詳しく解説します。
地上型レーザースキャナーの最も一般的な活用法の一つが、建設作業開始前(起工前)や出来形測量です。測量の際には機器の設置場所を慎重に検討し、対象物の近くに水面や構造物(特にガラス面)、植物などがないかを確認しましょう。急傾斜になっている場所や、足元が悪く機器が揺れる場所は避け、計測対象物とできるだけ正対した位置になるよう設置することが重要です。
国土交通省が作成した「出来形管理の監督・検査要領(土木編)」では、出来形管理において地上型レーザースキャナーを利用する優位性について、以下2点を挙げています。
(1)計測の準備作業が軽減でき、また計測時間も短いために測量作業が大幅に効率化する。
(2) 測量結果を3次元CAD等で処理することにより、鳥瞰図や縦断図・横断図、数量算出など、ユーザの必要なデータが抽出できる。
参考:地上型レーザースキャナーを用いた出来形管理の監督・検査要領 (土工編)(案)(国土交通省)
上記の資料では地上型レーザースキャナーを出来形管理に使用する際の注意点や、出来形管理図表の作成帳票例なども同時に示されています。加えて、現状では地上型レーザースキャナーのメリットは測量や出来形計測・数量算出といった施工段階を中心としたものに留まっているものの、今後は取得した点群データの利活用による業務効率化などの幅広いメリットが期待されています。
構造物が図面通りに建っているかをチェックする作業でも、地上型レーザースキャナーが役立ちます。対象物の空間位置情報を面で計測できるため、従来の測量機のように複数回の測量作業が必要ありません。また、取得した空間位置情報を使ってデータ上で測量も可能です。後日、新たに測量が必要になった場合も再び現場で計測する必要がなく、業務効率化につながります。
地震や台風といった災害が発生した場合、道路や橋などのライフラインの迅速な復旧が求められます。国土交通省では、デジタルデータを活用した被災状況の確認および損傷評価のために被災前の継続的なデータ取得を推進しています。
航空及び地上型レーザースキャナーを用いることで、被災した道路・建物などの計測にかかる時間を短縮しつつ、災害復旧の設計・施工に必要な詳細データが取得できます。 主な計測領域は斜面の崩壊した箇所や対岸の地形など広範囲にわたり、作業員が直接現地に赴くことが困難な場所でも、安全かつ迅速に計測することができます。
計測ネットサービスでは、地上型レーザースキャナーとトータルステーションが一体型となったマルチステーションを使用した、「3次元面的計測システム DAMSYS-Hybrid(ダムシス ハイブリッド)」を提供しています。
Leica社製のマルチステーションを用い、プリズムによる精密な点データの計測と、スキャナーによる面データの計測を一度に行えるのが大きな特徴です。スキャナーで取得したデータは、ヒートマップ表示させることでその場で確認することが可能です。 斜面の変化などを定期的に監視することで、土砂崩れの二次崩落を予測するなど防災や災害発生現場での工事においても活躍します。
トータルステーションの機能と3Dレーザースキャナーが備わったマルチステーションで法面や路面を変位計測
【ダムシスハイブリッドでできること】
・3次元座標を取得した変位計測
・レーザースキャナーで点群を取得しスキャン後すぐにヒートマップ化
地上型レーザースキャナーはコンクリート打設後の出来形管理においても活用可能です。コンクリート打設においては、設計値との差分確認や平坦性の担保が重要となります。
3Dサーフェス-Bは、コンクリート打設の平坦性などを数値で表すことができる、出来形管理に特化した製品です。スキャンした点群をメッシュデータに加工処理し、設計値と実測値の差分を色と数値で表示できます。 自動で色分けされたデータがヒートマップで表示されるため、視覚的にわかりやすく、一目で設計値との乖離を確認可能です。橋梁上部工のコンクリート打設時などに広く活用されており、設計面との高さの差分を表示する機能を持ち、計測したデータは出来形として活用できます。
【NEWS】3Dサーフェス-Bが、国土交通省の資料で「出来形管理の省人化・省力化を図る」技術として紹介されました。
出典:3次元計測技術を用いた出来形管理の活用手引き(案)第15編 構造物工(橋梁架設・床版)編(国土交通省)
地上型レーザースキャナー(TLS)は、効率的に点群データを収集できる測量機器です。 建築・土木・防災などの多岐にわたる分野で活用されており、従来の測量方法に比べてスピード感のある測量を実現します。
国土交通省が推奨する「i-Construction2.0」では、3Dデータの活用に加え、その元となる点群データの重要性が指摘されています。現場における作業効率の向上やコスト削減だけでなく、データ活用の可能性を広げることは自社のビジネス上の強みとなり得ます。 今回紹介した地上型レーザースキャナーの概要やメリット・活用例をもとに、ぜひ現場への導入を検討してください。
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