杭打ち工事には、建物などを建てる際に地盤を補強する「基礎杭打ち」と、周辺の土が崩れないようにする「土留め」、海や河川などで水を遮断する「遮水」の主に3つの目的があります。
以下ではそれぞれの杭打ち工事の特徴について詳しく解説します。
基礎杭打ちとは、建物を建てる際に地盤を補強する基礎工事で、構造物の沈下や道路の陥没を予防します。事前のボーリング調査によって地質・地層を調査し、その結果をもとに地下の硬い地盤まで杭を打ち込みます。基礎杭打ちには、大きく分けて2つの工法があります。
既製杭工法は、あらかじめ工場で作られた鋼管杭などを地中に挿入する方法です。主に以下の工法があります。
打込み杭工法 | 杭を振動や打撃で、地中の所定の深さまで打ち込む工法 |
埋込み杭工法 | 設計位置の地盤を掘削し、杭を建込み・埋設する工法 |
回転杭工法 | 先端に螺旋羽などを取り付けた鋼管杭を用い、全回転圧入機で杭を回転させながら圧入する工法 |
既製杭工法のメリットは、すでに完成した杭を使用するため工期が短縮できること、施工が簡単であることが挙げられます。一方でデメリットは、制作や運搬が可能な杭の長さに限界があることです。長い杭が必要となる現場では、次に紹介する「場所打ち杭工法」が適しています。
場所打ち杭工法とは、杭を打ち込む地盤をあらかじめ掘っておき、そこにコンクリートを流し込んで杭を造成したり、掘削しながら杭を造成する方法です。工事を行う場所に合わせて改良体を造成できることから、既製杭工法よりも柔軟に施工ができます。主に以下の工法があります。
オールケーシング工法 | ケーシングチューブ(筒状の機械)を回転・圧入しながら地盤を掘削し、その内部の土を除去したあと、コンクリートを打ち込んでケーシングチューブを引き抜く工法 |
深層混合改良(DCS)工法 | 地盤を撹拌しながら固化材(セメント系スラリー)を地盤に注入し、地盤の土と混ぜ合わせることで改良体を造成する工法 |
サンドコンパクション(SCP)工法 | 地盤にケーシングパイプを貫入し、その内部に改良砂を投入し、振動・衝撃などによって締め固め、改良体を造成する工法 |
パワーブレンダー工法 | セメント系固化材などを地盤に注入して混ぜ合わせながら移動し、壁状、柱上、ブロック状などの連続した改良体を地中に造成する工法 |
土留めとは、周辺の土壌や地盤が崩れたり、流れたりする事を防止する方法で、山留めとも言います。そして遮水は、海や河川などでの作業時に水が入らないようにしたり、水を貯める必要のある構造物を作るための方法です。用途は異なるものの、どちらも土や水を遮断するという点では共通しており、主に以下の工法があります。
親杭横矢板工法 (遮水性なし) | H形鋼の杭を一定の間隔で地中に打ち込み、その間に横板を入れて壁のようにし、土留めをする工法 |
鋼矢板(シートパイル)壁工法 | 凹凸の板状になった杭(シートパイル)を打ち込み、それらを連結させて土や水を遮断する壁を作る工法 |
鋼管矢板壁工法 (基礎工事にも利用可) | 円形の鋼管を打ち込み、それらを連結させて土や水を遮断する工法 |
地中連続壁工法 (基礎工事にも利用可) | 掘削した溝に材料を充填し、壁のような連続する改良体を造成することで、土や水を遮断する工法 |
地盤改良や基礎工事に役立つ、当社の杭打ち工事関連製品を紹介します。
トータルステーションのノンプリズム計測機能を用い、杭の外径の上下2点ずつを計測することで杭芯位置を算出し、杭の偏心を管理するシステムです。
設計値と実測値との差分は、車載モニターや遠隔地のWEBブラウザ(K-Cloud)で確認できます。円柱型の杭であれば、既製杭や鋼管杭、場所打ち杭など幅広く活用が可能です。
対応工法 | |
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既製杭工法 | 打込み杭工法 ・打撃工法 ・バイブロハンマ工法 埋込み杭工法 ・中掘り杭工法 ・プレボーリング杭工法 ・鋼管ソイルセメント杭工法 回転杭工法 |
場所打ち杭工法 | ・オールケーシング工法 ・サンドコンパクション工法 |
※施工現場の状況、条件によって対応外となる場合があります。
GNSSを利用して杭芯の位置情報を計測し、杭打機を打設位置まで誘導するシステムです。
設計杭芯座標と重機の位置関係を車載モニターなどに表示することで、基礎工事の杭打ちや三点式重機の誘導操作の精度向上、作業効率向上をサポートします。3Dパイルビューアーとの併用によって施工情報を可視化し、より精度の高い管理が可能となります。
対応工法 | |
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場所打ち杭工法 | ・深層混合改良工法 ・サンドコンパクション工法 |
※施工現場の状況、条件によって対応外となる場合があります。
トータルステーションのノンプリズム計測機能を用いてシートパイルの上下1点ずつを計測し、法線の出入りと鉛直を管理するシステムです。設計値と実測値との差分を遠隔地のWEBブラウザ(K-Cloud)に表示し、品質向上に貢献します。U型やハット型のシートパイルに対応し、多様なシートパイル施工現場で活用可能です。
対応工法 | |
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土留め・遮水 | ・鋼矢板壁工法 |
※施工現場の状況、条件によって対応外となる場合があります。
トータルステーション1台で斜杭を計測し、計測作業の省人化と施工品質の向上に役立つシステムです。トータルステーションのノンプリズム計測機能で、杭外径の上下2点ずつを計測し、設計値と実測値の差分を数値とビジュアルで表示します。斜杭の打設中に傾斜角と方位角を管理できることや、既製杭と場所打ち杭の両方に対応する柔軟性が特徴です。
対応工法 | |
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既製杭工法 | 打込み杭工法 ・打撃工法 ・バイブロハンマ工法 埋込み杭工法 ・中掘り杭工法 ・プレボーリング杭工法 回転杭工法 ロータリーパーカッションドリル工法(鋼管杭) |
場所打ち杭工法 | ・オールケーシング工法 |
※施工現場の状況、条件によって対応外となる場合があります。
H形鋼の杭打設において、杭の打設位置や傾き、設計値との差分を算出・表示するシステムです。トータルステーションのノンプリズム計測機能でH形鋼側面の上下1点ずつを計測し、打設中に視準方向の位置ズレや倒れを確認できます。数値とビジュアルで車載モニターに表示するため、その場で差分が確認でき打設の品質向上につながります。
対応工法 | |
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既製杭工法 | 埋込み杭工法 ・鋼管ソイルセメント杭工法(H形鋼芯材) |
※施工現場の状況、条件によって対応外となる場合があります。
重機にあらかじめ設置されている施工管理装置と連携することで杭の位置や改良体・施工情報を可視化し、記録するシステムです。パイルナビクラウド-Vやパイルナビクラウド-Pと併用します。
パイルナビクラウドシリーズから計測した杭の設計値との差分を取得し、施工管理装置から施工情報を取得することで、3Dパイルビューアーで各データの一元管理が可能となります。
施工情報はK-Cloudに収集され、インターネットを通じて情報共有が可能で、地盤改良や杭工事の出来形管理・品質向上・帳票作成の効率化に貢献します。
※施工管理装置によっては対応できない場合があります。
対応工法 | |
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既製杭工法 | 埋込み杭工法 ・中掘り杭工法 ・鋼管ソイルセメント杭工法 回転杭工法 |
場所打ち杭工法 | ・深層混合改良工法 ・サンドコンパクション工法 |
土留め・遮水 | ・鋼管矢板壁工法 ・地中連続壁工法 |
※施工現場の状況、条件によって対応外となる場合があります。
杭打ち工事は、軟弱な地盤上の建物や構造物を支えるための基礎工事や、地中深くの地盤改良に必要不可欠な施工の一つです。
本記事では、杭打ち工事の目的や代表的な工法と、関連製品について解説しました。
地盤の状況や建物の規模に応じた適切な工法を選ぶことはもちろんですが、施工の精度向上や効率化、見える化などにはICT技術の活用もおすすめです。
より正確かつ効率的な杭打ち工事を実現するため、今回紹介した内容をもとに、ぜひ最新技術の導入を視野に入れてみてはいかがでしょうか。
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