前職は測量機器メーカーの営業マンであった私は、納品先であるお客様と接するなか、現場における多くの課題を目の当たりにしてきました。

メーカーとしては、製品を販売することが事業の中心になりますが、まだ30年ほど前は、ダム工事も、トンネル工事も、橋梁工事も、人力による安全管理が中心で、事故防止に向けての対策としては充分な環境とは言えずに工事に携わるお客様が安全確保へ向けて苦戦する姿と、苦悩の日々がありました。

果たして、測量機器を提供するだけでいいのだろうか？　現場の安全安心を自分たちがサポートする手立てはないのだろうか？　そんな疑問が日に日に大きくなり、計測や測量作業を自動化するサービスの提案を社内でも行っていたのですが、組織というものはそれほど簡単に動いたりするものではなく、事業化するまでには至りませんでした。

実現できないのであれば、自分で起業するしかない！　そして、計測ネットサービスは誕生したのです。

創業の思いを実現するために、新たに開発したのが、今でも当社の主力商品である3次元変位計測システム【DAMSYS】です。

測量器を自動制御し、自動的に3次元データをとれるというシステムは、当時としては画期的なものでした。その頃はまだ、今のような通信インフラも十分に整備されていませんでしたが、それでも、24時間自動計測することが可能になり、施工に伴う地盤や構造物のわずかな変位がその後の事故につながるリスクのある工事現場に、大きな安全安心をもたらすことができたのです。

その後のインターネットの発達にともない、【DAMSYS】も進化してきました。同じような工事でも、現場の環境や地盤の状態などにより状況が異なります。当然、お客様からの計測管理に対するニーズも変わってきますので、カスタマイズしたサービスを提供する等の対応で、個々の現場に寄り沿った “安全・安心”を追求しております。特定の工事に向けて、お客様と新たなシステムを共同で開発を行うような場合もあります。

また、早くからIoTにも着目してきました。そして、変位計測や測量データだけでなく、気象や騒音、振動、地中の変位や水位計等の工事現場で必要とする情報や、熱中症計など現場で働く人々の健康管理に関与するデータまで、多岐にわたる計測データを一元管理し、あらゆる端末でモニタリングできる【K-Cloud】というシステムも開発しました。

こうして培ってきた知見と技術力の積み重ねによって、時代が変わりゆくなかで、新たな安全安心をもたらすことを可能にしてきたのです。

創業当時は、まだブルーオーシャンだったこの市場も、その後の競合他社の出現など、必ずしも順風満帆にこの四半世紀を歩んできたわけではありません。最近ではコロナ禍の影響で工事の進捗が停滞したことにより少なからず打撃も受けました。

しかしながら、私たちには、この先の未来を力強く歩み続けていく確固たる自信があります。それは、どこにも負けない３次元計測での経験値を有していること。そして、何よりも、どのような案件に対しても、全社員がさらなる現場の安心安全、施工品質向上の追求に、愚直に、誠実に取り組んでいるからです。

これからも、当社の柱であるコアな技術にますます磨きをかけつつ、新たな技術を積極的にとりいれ、ICTによるお客様の作業の効率化や生産性の向上をサポートしていく所存です。

今後とも、よろしくご愛顧のほど、お願い申し上げます。

代表取締役社長

※2023年10月当時